退職の間際に見た社員達の真の姿

最終出社日の退社1時間前に実行した第3の復讐。
社長宛のメールには、パワハラ課長の告発と、内容証明郵便の全文、新たな怒鳴り事例の記述なども加えた。

さすがに、CCに全社員を入れるのは断念した。
しかし、私はそのメールを、経営陣に個別に送ることにした。

人事部長、経理部長、総務部長、第一営業部部長、第二営業部部長、派遣事業部部長など部長をくまなく網羅した。
その上、副社長、理事、監査役、顧問などとにかく社内で経営に関与していると思われる人間には、すべて送った。

中途社員の教育を担当してくれた60代の佐々木顧問。
彼は、実に親切に、社会人の大先輩としての経験と知識を惜しみなく、講義の中で私たちに授けてくれた。

彼は、会社のために自主独立の気概を持って貢献する人間になれ、と建前上は素晴らしいことを言っていた。
その話に、私は陶酔などもしていた。

彼は、メールなどで相談すると、すぐに返信をしてくれる人間だった。
しかし、私が送ったメールに対しては、完全に無視をした。

私的なメールアドレスも文中に書いて、連絡をくださいとまで書いた。
しかし、そのメールアドレスに佐々木顧問からのメールが来ることは永遠になかった。

私は、幻滅した。
彼もまた、社畜に過ぎなかったのか、と。

所詮、どんなに偉そうなことを言っていても、自分のクビが危うくなることには一歩も踏み出さない臆病さ。
結局、会社からもらう報酬の奴隷に過ぎなかった。

どんなに親しくしていた他部門の社員でも、私のメールにはしかとを決め込んでいる様子だった。
私は、結局、そういう彼らの態度には大きく失望した。

今考えると当たり前のことなのかもしれないが、結局、みんな、自分の社内の地位を危うくしてまで、退社が決まった赤の他人を救う勇気など、これっぽっちも持っていないのである。

結局、会社の人間関係とは、社内で永遠に一緒に頑張っていこう、みたいな暗黙の経済的前提の上に成り立つものに過ぎないのだ。
その前提が外れた途端、そこにはもはや関わりを持つだけの動機もなくなり、全くの赤の他人になる。

私は、このパワハラ会社の退職劇を通して、そのようなごく当たり前の社会人としての「常識」を、再度、強く実感させられたのであった。

もちろん、退社後も、ごく一部(2-3人)の社内の人間、社外に出た人間とは、今でも交流が続いている。
こういう人たちとの関係は、貴重な財産である。

それは、経済的な利害を超えて、真に続く友情に近いものと言っていいであろう。
それは、同じパワハラ上司のもとで怒鳴り声に耐えた者達が持つ、一種の連帯感というようなものが根拠になっている。

さて、当のパワハラ上司であるが、まだ定時の30分前なのに、突然、怒りに満ちた表情でひきつった顔のまま、かばんを抱えてオフィスを出て行った。

あ、多分、社長か誰かから、私のメールの転送を受けたに違いない。
そう確信した。

私は、最後の挨拶するかしないかを迷っていたが、彼から先に出て行ったのであるから、もうこれで挨拶の必要はなくなったと、変な安堵感を覚えた。

そして、私は時計の針が午後5時きっかりになったとき、誰の視線を気にもせずに堂々と席を立ち、静かにオフィスを後にした。
もう、二度とこのオフィスに来ることはないだろう、そう思った。

(続く)

コメント

  1. きっと明日は晴れ より:

    1. 手のひらを返すって事ですね。
    私も、前の会社で

    先日まで散々会社の悪口を言い
    パワハラ以外の何ものでもない
    とまで断言をし
    経営陣のやり方や
    会社のやり方を批判していた人間達が

    私達の問題告発後には

    口をそろえて

    「パワハラは一切ありませんでした」

    と皆の前で発言し
    はしごを外してきた事は
    今でも忘れられませんね。

    奇麗事を言ってても
    裏切る人間はあっさり
    主張を撤回するって
    事ですよね。

    http://ameblo.jp/sasaeaitai365/

  2. パワハラに負けない より:

    2. Re:手のひらを返すって事ですね。
    >きっと明日は晴れさん
    コメントありがとうございます。
    まさしく、労働者の弱さがこういう「裏切り」に現れていますね。
    自分もこういう状況に追い込まれないと、会社に立ち向かう勇気は持てないのでしょうね。
    でも、きっと、裏切った人たちも、どこかで良心の咎めを感じていることとは思います。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  3. オレンジ より:

    3. 無題
    同僚にパワハラの相談をするとみな自分かわいさに無視されるのではないかと思いずっと相談も出来ずにいます。
    相談したくてたまらなく体の調子が悪くなっていますが、無視の恐怖に打ち勝てません…
    http://ameblo.jp/orangeorange-orange/

  4. RyuMorimitsu より:

    4. 本日の更新お疲れ様です
    「同じパワハラ上司のもとで怒鳴り声に耐えた者達が持つ、一種の連帯感」
    非常によくわかります。私の場合は戦友と呼び合っています(笑)

    手のひらを返すについて「きっと明日は晴れさん」

    もコメントされておられますがはっきりいって

    そうゆうものです!確かに精神的に追い詰めら

    れたあの状況で手のひらを返されるのはなお辛

    いですが私はそれを裏切りとは言えません。

    やはりその人達にはその人達の優先順位があ

    ります。今はその人たちを責めるべきではない

    事はお二人ともよく理解されているのではないで

    しょうか?

    http://ameblo.jp/haguruma-77/

  5. miyabi27 より:

    5. 結局は
    みんな強いものに付くんですよね。そんな会社内の常識を越えて、自分の身を案じてくれる人は本当に貴重な存在です。

    自分が窮地に立たされた時ほど、真の仲間が誰なのか、分かる時ですよね。
    http://ameblo.jp/miyabi27xmas/

  6. パワハラに負けない より:

    6. Re:無題
    >オレンジさん
    同僚の反応って、やってみないと分からないところがありますよね。
    私は、ランチに行ったりしながら、上司の悪口を本音レベルで言い合った仲間達が、最後まで私の味方になって助けてくれました。
    慎重に、まずはメールとかで、一緒に食事したいとか誘い出して、相談してみたらいいかもしれませんね。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  7. パワハラに負けない より:

    7. Re:本日の更新お疲れ様です
    >RyuMorimitsuさん
    本当に、同じつらさを耐え忍んだ戦友という表現がぴったりですね。
    裏切りと言えば言い過ぎですね。
    それぞれの価値観や状況の中で判断して行動したに過ぎないと言えば、その通りですね。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  8. パワハラに負けない より:

    8. Re:結局は
    >miyabi27さん
    おっしゃる通りです。
    本当に、窮地に立たされた時の仲間が真の仲間ですよね。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

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