(前回
からの続き)
社長室に呼び出された私。
課長のパワハラを告発したメールに対して,厳しい批判が加えられるのではないかと,不安を抱いた。
だが,社長は思いのほか,静かな口調で私に話しかけてきた。
その口元には,笑顔すら浮かべている。
「安達君,いろいろと大変だっただろう」
そういう慰労のような言葉をかけてきた。
「大石課長からは話を聞いたよ。
確かに,彼の怒鳴り声は,昔からそういうところがあったからね。」
やはり,課長は昔から怒鳴り声を張り上げるタイプだったのか。
「彼には,そういう怒鳴ったりすることはやめるように私から言っておいたから,安心してくれ。」
うーむ。
社長は,本気でそんなことを言っているのだろうか。
それとも,何事もなかったかのように,事を荒立てたくないから,私を懐柔しようとしているのか。
いろいろな考えが私の頭の中をぐるぐると巡っていた。
「この前,係長という役職を解く事にしたけど,あまりそれに対しては深く考えないでほしい。」
はあ?
それって,どういう意味?
「実は,君のためにね,新たな人事制度を作ろうかなと思っているんだよ。」
はあ?
新たな人事制度?
私のため?
「そ,それはどういうことでしょうか。」
私はようやく重い唇を開いた。
「部下のいない役職というものを作ろうかと思っているんだ。」
なんだ,それ?
と私は思った。
そんな感じで社長室には15分ほどいたかと思うが,社長は終始,柔和な雰囲気の演出に努めているようだった。
私は,自席に戻ると仕事を始めた。
社長ににらまれるかもしれないという不安は外れた。
少し,安心したのは事実だった。
だが,課長は怒鳴らなくなったものの,冷酷なマシーンのような管理を変える事はなかった。
むしろ,社長への直訴メールをきっかけに,その冷たい態度は,日に日に度を増しているように感じた。
やはり,そんなに甘くないな,と思った。
社長への直訴メールで,課長はプライドを傷つけられ,私への恨みを抱き始めたのかもしれない,とそう思った。
私を怒鳴りつけて出社拒否に追い込んだのは課長の方なのに,なぜ私だけが降格させられ,課長からは第2の陰湿ないじめを受けなければいけないのか。
そういう理不尽な思いは消える事はなかった。
(続く)
コメント
1. 無題
返信有難うございます。
辛いですよね。私も実は社長へ直訴しようと考えることもありますがうまく隠ぺいされて悪い結果になることを恐れて泣き寝入りしました。
私は社長への直訴のことを考えるだけで手が震えました。
アメーバのアカウントを持っていないので取得してからメッセージ送らせていただきますね!
2. Re:無題
>オレンジさん
コメントありがとうございます。
社長など経営陣の直訴はかなり勇気がいりますよね。
私も退職を覚悟して、自分のサラリーマン人生を賭けるような気持ちでようやく実行しました。
メッセージをお待ちしています。
http://ameblo.jp/anti-pawahara/
3. こんばんは
お疲れ様です。
社長への直訴… 本当に勇気がいったと思います。信じてもらえないかもしれないし、うやむやにされる事だってありますもんね。
立場を利用しての暴言 本当に許せないですね。
私も色んな言葉が頭から消えません…
http://ameblo.jp/tamayup/
4. Re:こんばんは
>まゆぴょんさん
コメントありがとうございます。
パワハラに立ち向かうって,ある意味,退職の覚悟が必要になる場合がありますよね。
従業員は本当に弱い立場ですよね。
上司から言われた言葉って,傷付くし,なかなか忘れられないですね。
でも,そこに生活と人生がかかっている以上,ただ泣き寝入りすることだけは,避けたいものだなと思います。
http://ameblo.jp/anti-pawahara/
5. おじゃまします!広告デザインしています。ゆうきといいます。
過去の記事も読ませていただきました。これからも応援していますお互い頑張りましょう。色彩心理や社会心理の観点からみたデザインの事をお話しています。読者登録して頂けると嬉しいです!
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