盛り上がった送別会

退職の日、私は静かに挨拶もせずにオフィスを立ち去った。
憎たらしいパワハラ課長は先に帰ってしまったし、その上司も不在だったからだ。

実は、私の味方をしてくれた同僚達が、送別会を準備してくれていた。
幹事は、私の元部下だった大友君だった。

その送別会は、同じ部署の中の実に8人が参加してくれるという壮大なものとなった。
彼らは、酒と料理を楽しみながら、パワハラ上司の悪口全開で盛り上がった。

「いやあ、あの大石(課長の名前)さ、ほんとひでー奴だよな」

私はこう答えた。

「大石さ、きっと俺のメールを他の部門の誰かから転送されて、多分読んだと思う。
だから、急に不機嫌な顔をして早退したんだと思うよ。」

「あ、そうだったんだ。
あいつさ、今日はさ、やけに早く帰ってしまったから、なんかあったのかと思ってたよ。」

そこに参加してくれた人には、パワハラ課長の怒鳴り事例をいろいろ上げてくれたことのお礼を述べた。
彼ら、彼女らはみな、一様に、パワハラ課長への反発心を隠さずに口々にまくしたてていた。

一種、異様な盛り上がり方であった。
私にとっては、退職という結果に至る大きな区切りの日であると共に、この仲間達との勝利の宴でもあった。

この宴会に招かれなかったのは、隣のチームのリーダー、降格された私に反抗した社員A、会社に新卒入社後22年間勤め続けパワハラ体質に髄まで染まった社員Bの3人だけであった。

最後には、プレゼントまでもらい、私の食事代もすべて払ってくれた。

実は、私の退職日の2週間後に契約打ち切りが決まっていた、派遣社員として私のチームに来てくれていたCさんとDさんの送別会も兼ねていた。
私の退職と、この有能な派遣社員2人がいなくなれば、一気にチームは寂しくなる。

私たちが携わっていた製品の衰退が目に見えるようであった。
これもすべて、あのパワハラ課長の怒鳴り声が招いた自業自得であった。

怒鳴れば部下は動く、なんて考えているバブル世代の管理職の古い考え方は、もう通用しない。
そんなことも認識できていない、どうしようもないパワハラ課長であった。

私にとっては、もうこの会社にも、この会社の行く末にも未練は全くなかった。
有志と終電近くまで飲んで歌って過ごした私は、最後は静かに電車に乗って帰宅の途についた。

「ああ、この会社での戦いは終わった。
来週からは、新しい会社で希望に満ちて仕事に励んでいこう。」

そう思って、もう二度と来ないであろう、この東京都の外れのローカルな鉄道の駅を後にした。

(続く)

コメント

  1. miyabi27 より:

    1. お疲れ様でした。
    送別会開いて下さるお仲間がいて、すごく嬉しいですね(*^_^*)。

    ひとつの区切りがつきましたね。ここでの闘い、ほんとにお疲れさまでした。次の会社で何かが起きるのでしょうか?どきどきはらはらです。・°°・(>_<)・°°・。
    http://ameblo.jp/miyabi27xmas/

  2. パワハラに負けない より:

    2. Re:お疲れ様でした。
    >miyabi27さん
    パワハラ会社にあって、仲間の存在はありがたいですよね。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

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