人事部長による退職強要面談

私は、4週間に渡る壮絶な PIP (Performance Improvement Plan = 成果改善計画) を乗り切った。

これは、何度も述べているように、単に「改善」を目的としたプログラムではなく、過大な業務を課題として課して、それができないことを根拠に退職を強力に迫るという、退職強要プログラムである。

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4週間のPIPを終えて

私が、毎週、マネージャー達が6-7人も集まる前で、1人でその週の成果を発表し、その場で徹底的に批判されるという最高に精神的に苦しい期間を、4週も繰り返したことは、今までの記事で叙述した通りである。

そして、4週目が終わった時、上司は不敵な笑みを浮かべながらこう言い放った。

あなたの能力のなさは、あまりにも明白になったね
これかどうすべきか、この週末はよく考えておいてくれ。
来週には、人事部長との面談をセットしておくから、そこであなたの忌憚なき思いなり考えを聞かせてくれ。」

私はその時、

ああ、これで俺も解雇か…
この会社のためにこんなに身も心も捧げて頑張ってきたのに…
これが最後の仕打ちか…」

と絶望的な気持ちになったのを覚えている。

ユニオンへの相談

私はその話を上司から聞いた後、すぐにお世話になっていたユニオンに電話をした。

彼は電話口でこう言った。

「とうとう会社はPIPの成果不達成を材料として、公式的に解雇を通知してくるつもりだろう。
でも、こんなひどいやり方で能力がないと決めつけてくるなんて、単なる解雇の正当化のための茶番に過ぎないではないか
よし、今こそ、団体交渉をすべき時だ。
団体交渉の要求書を書いてあげるから、すぐにうちの事務所に来てくれ。」

ユニオンのこの言葉はとてもありがたかった。

この世の誰もが私を敵とみなし、冷たく当たってくるように感じる中で、味方が一人でもいるというのは、本当に心強いものだ。

私は、ユニオンで団体交渉の要求書を書いてもらい、来るべき人事部長との面談の日に解雇を正式に通告されたら、すぐに手渡せるように準備をした。

弁護士への相談

当然だが、PIPが始まる前から相談を続けていた弁護士にも早速、面談を申し込んだ。

この世に及んで、1時間5000円の相談料は、人生の保険と考えれば、決して高い値段ではなかった。

弁護士の先生は

「正式に解雇を通告されたら、解雇無効を求めて弁護士の名前で交渉を申し入れたり、裁判を進めていこう
今回のPIPの内容とか、マネージャーの発言とか、人事部長の発言とかは、すべて正確に記録しておいてほしい。
それが、裁判ではとても重要な証拠になるからね。」

と力強く励ましてくれた。

会社は、弱き労働者に対してはどこまでも不遜な態度を取るが、弁護士が表に出てくると、途端に態度を改めて交渉に応じてくる可能性もある、とのお話だった。

私はこの言葉を聞いて、とうとう来るべき会社との戦いの最後の舞台の幕が開きつつあることを、強く実感した。

そして人事部長との面談へ

週が明けると、なぜか数日間は音沙汰もなく過ぎていった。

私は、その間、やりきれなかったPIPの課題の続きを粛々と進めていた。

PIPでは、ある機能を持ったプログラムを作るように言われたが、その機能は全部で40機能に及び、1機能の実装には3日から5日間はかかる内容であった。

当然、これは4週間の中でやり切れるものではなく、単純に考えて早くて半年、設計や検証などを含めれば、長くて1年はかかりそうな膨大な量の作業であった。

そして、ある日、それは死刑囚の呼び出しのように突然に訪れた。

机の電話が鳴り、取ってみると、人事部長が自分の部屋に来るように言ってきた。

人事部長の部屋は、さすがは外資系の大手企業であるだけあって、20畳以上はあるかと思われる立派な個室のオフィスであった。

私は、入室前にiPhoneのボイスメモの録音開始ボタンを押して、ズボンのポケットに忍ばせておいた

マイクの部分を少しポケットから出るようにして、なるべくクリアな録音ができるように気を配った。

「自ら退出してください」との言葉

そして、着席すると人事部長が突然言い放った。

あなたは、もう分かっているかもしれませんが、この会社には成果をもたらさない不要な人間です。
この時間を持って、入館証を返却して、会社から退出してください。

私はその言葉の意味がよく分からず、一瞬頭が混乱した。

そして、こう聞き返した。

そ、それは、つまり、会社を辞めてください、という意味でしょうか。

人事部長は、とうとう来るべき時が来たと言わんばかりの表情で、しかし、口を濁すようにこう言った。

自ら社員証を置いて、退出して頂くという意味です。

私はこの曖昧な表現だけで長年勤めてきた会社を退出するほど、馬鹿ではなかった。

白か黒かはっきりと言ってもらわないと、のこのこと退出するわけにはいかなかった。

それは、『解雇』という意味でしょうか?

その言葉を聞き、人事部長は驚くべき言葉を口にした。

(続く)

コメント

  1. パワハラ経験者 より:

    また本編が動き出しましたね!パワハラを受けていた当時、上司と戦う事、会社と戦う事、会社の中にも仲間がいる事を再認識させてもらいました。今を苦しむ人の羅針盤に必ずなりますので、内容がセンシティブで色々更新しづらい状況かと推測されますが定期的な更新宜しくお願いします!

  2. るんるん より:

    よく耐え抜きましたね
    私も今、同様の状況ですが
    記事を読んで勇気を貰っています!!
    有難うございます!!

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