「超優秀」な上司のやり方

(続き)

パワハラ上司の冷たいやり方に対し、耐え難きを耐え忍んでようやくの思いで退職にこぎつけた私。
だが、私には家でゆっくり休養するなどというお金の余裕はなかった。

土日を挟んで、すぐに転職先の会社に出勤であった。
田舎とは違い、山手線の駅の近くにあるその会社は、まさしく都会の中にあった。

だが、このK社で新たなパワハラの幕が切って落とされようとしているとは、その時は全く想像だにしなかった。

会社での歓迎会も終わり、非常に良い雰囲気でスタートを切れたように思えた。
しかし、即戦力を期待されて入ったこともあり、上司の要求はなかなか高いものがあった。

上司は物理学博士号を持っており、大手の研究所で論文を量産し、特許の取得の実績もあるすごい人物だった。
毎週のようにどこかの会場で講演会の講師をしており、国内・国外の学会に飛び回るような超多忙な生活をしていた。

こういう上司のもとで一度働いてみたい、というそんな理想をすべて満たしているかのような優秀な上司だった。

だが、入社後の現実は違った。
初日は何もなかったが、2日目、3日目になるに従って、あれやっといて、これやっといてと、曖昧な指示でどんどん仕事を振られた。

一番きつかったのは、英語の200ページはあろうかと思われる論文を渡されて、この内容を3日後にお客様の前で発表する20ページくらいのパワーポイント資料にまとめておいて、というものだった。

難解な専門用語がびっしりと並び、1ページ読むだけで肩が凝ってたまらなかった。
必死にタイトルと図表を追って、2日目の夜は会社に泊まり込んで作業をした。

こんなことが、入社して半月も経たないうちに始まっていたのである。

「頑張らなきゃ!
仕事は甘くないさ。
これを頑張れば、必ず認めてくれるはず。」

そういう思いで必死に取り組んだ。

だが、お客様の要求もなかなか厳しかった。
その分野では10年近く開発を続けてきたプロ相手に、若干1か月程度の付け焼き刃的な知識で、資料調査や情報提供をするコンサルタント的な仕事である。

お客様の言っている技術的な内容が20%でも理解できたらいい方であった。
お客様とのやり取りは、上司がいなければ、私一人では絶対に不可能な状況であった。

そんな中でも、土日に出勤したりしながら、遅れを取り返し、必死に上司の求める成果を出そうと努力を続けていた。
だが、疲労と緊張は次第に心と体に蓄積していった。

そして、入社して3週間も経つ頃にはこう思うようになった。

「ああ、どうしよう。
こんな感じでずっと仕事をしないといけないのだろうか。

なんで、上司はこんなに頭が痛くなるような複雑な内容の仕事を、こんな短時間でやれと毎回言うのだろうか。
これは結構きついな…」

朝起きることが辛いときもあったが、何とか眠い目をこすりながら、顔を洗い、スーツを着て、バスと電車の混雑に耐えながら通勤を続けていた。

一緒にランチに行った同僚からはこう言われるようにもなった。

「入社して間もないのに、なんか結構忙しくしているみたいだね。
大丈夫なの?」

同僚といっても、その上司のもとで仕事をしているのは私一人だから、他の人は私の仕事の内容は分からないのである。
私はそんな同僚の言葉に苦笑いしながら、「なんとか頑張ってます」と答えるのが精一杯であった。

実は同僚達は、この上司に対する苦い経験をみな持っていたのであるが、そのようなダークな話が出てくるほどの仲にはなっていなかった。

そして、入社からわずか1か月目のある日、事件は突然に起きた。

(続く)

コメント

  1. きっと明日は晴れ より:

    1. 大きなプレッシャー
    会社の方針も自社の扱う商品知識も
    まだ完全ではない時に
    いきなり現場に放り出されて

    「これやっといて」

    というざっくりした指示しか出されないまま
    仕事を進めていくのは本当に大変ですよね。

    試行錯誤の連続で
    なかなか進捗ははかどりませんし
    期限も決まっているので、間に合わせないと
    いけないという大きなプレッシャーも
    ありますし。

    遅れを取り戻すのはおっしゃるとおり
    休日返上になってしまうんですよね。
    http://ameblo.jp/sasaeaitai365/

  2. パワハラに負けない より:

    2. Re:大きなプレッシャー
    >きっと明日は晴れさん
    そうですね。その会社や現場に長く勤めている人にとっては当たり前でも、外から来たばかりの人にとっては分からないことの連続ですよね。
    そこできつい言い方をされるとつらいですよね。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  3. オレンジ より:

    3. 無題
    英語200ページ訳すのって普通相当時間かかりますよね…3日って少なすぎて驚きました。
    私はワードとエクセルは使えるけどパワーポイントは未経験なので気が遠くなります…
    大変でしたね。
    http://ameblo.jp/orangeorange-orange

  4. 頭刃男(ズバオ) より:

    4. 続きを楽しみにしています
    大変失礼なタイトルですが、すみません、正直な気持ちです。
    新パワハラ上司登場で思わぬ展開でした。
    きっと既に乗り越えられた話しと勝手に思い、次の話しを楽しみにしております。
    まだ生傷だったらお詫びします。
    http://ameblo.jp/ymsetstory/

  5. 丈一郎 より:

    5. まだ続きがあるのですか、、、驚愕
    すべてを終え、
    期待を胸に新たなスタートをしたのに
    驚愕しました。

    難しいお仕事をされているみたいですが、
    どの業界にもそれなりのクソがいるんですね。

    今は、どうされているのかはわかりませんが、
    随分と長い戦いとなるようですね。

    どのようにして乗り越えられたのか、
    同じパワハラ被害者の1人としてとても気にしています。
    http://ameblo.jp/jouichirou14/

  6. パワハラに負けない より:

    6. Re:無題
    >オレンジさん
    正確なページ数は忘れましたが、とにかく分厚い英語の文書を渡され、要約してお客様の前でプレゼンしろという内容で、頭が痛くて大変でした。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  7. パワハラに負けない より:

    7. Re:続きを楽しみにしています
    >頭刃男(ズバオ)さん
    いえいえ、タイトルはお好きにつけて頂いてかまいません ^ ^
    傷は多少ありますが、今は、それを語る勇気が出てきました。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  8. パワハラに負けない より:

    8. Re:まだ続きがあるのですか、、、驚愕
    >丈一郎さん
    人をやたらと募集していたり、条件が良かったりする求人って、裏があるのだなと思います。
    でも、泣き寝入りしない覚悟で、頑張るしかないですね。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

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