私は、まさに台湾出張のその日の朝、社長に電話した。
「社長、実は、私は、今、とてもつらいんです…」
もちろんそれは、クビになることを覚悟の上での電話だった。
もう、自分のクビとかを考えていられないほど、追い詰められてなす術がない状況だったのだ。
社長はびっくりしたように私に尋ねた。
「おい、お前、何かあったのか?
正直に言ってみろ。」
私は、今の上司がとても怖いこと、台湾で一週間近く上司と相部屋で過ごさないといけないことが恐ろしくてたまらないことを打ち明けた。
「申し訳ありません、私は、行けそうにありません…」
そうして、私は出張のキャンセルを申し出た。
そう、航空券やホテルの手配代を全て自己負担させられようとも、あるいは、最悪の場合試用期間をまっとうできずにクビになろうとも、もう、そんなことを考えるほどの余裕もないほど追い詰められていた。
そして、嗚咽した。
涙が出てきて止まらなかった。
電話口で、声を上げて泣いた。
恥ずかしいが、まさしく、子どものように泣きじゃくった。
社長はしばらく沈黙していたが、私を慰めるようにこう言った。
「分かった、君の気持ちはよく分かった。
それはそれで、後で必ず対応策を取ることを約束する。
だから、今回は、我慢して、出張に行ってくれないか?
鈴木(上司の名前)には、出張中、お前に無茶な仕事を振らないように伝えておくから。」
私はようやく、自分の気持ちが受け止められたような気がした。
そして、しばらく間を置いてこう答えた。
「分かりました、今から支度をして、飛行機の時間に間に合うように、成田に向かいます。」
私は、電話を切ると、その時点からわずか30分で一週間分の衣類や洗面道具等をスーツケースに詰め込んで、足早に空港に向かった。
あと10分も遅ければ、ゲートが閉まって飛行機には乗れなくなるくらいの、ギリギリのタイミングだった。
上司は、怪訝な表情を浮かべて、私を空港で待っていた。
多分、社長から何かを言われたのだろう。
彼は、台湾に着くまで、私と一言も言葉を交わさなかった。
私の、台湾でのパワハラ上司との相部屋生活は、こうして幕を開けた。
(続く)
コメント
1. 無題
パワハラ上司と相部屋想像しただけで怖いです…
私なら電話した後空港に行かないと思います。
パワハラに負けないさんは責任感があったのですね!
http://ameblo.jp/orangeorange-orange
2. Re:無題
>オレンジさん
私も相部屋は嫌で、出張をやめたかったのですが、最後は義務感だけでなんとか行ったという感じでした。
http://ameblo.jp/anti-pawahara/
3. うう>_<
出張に行くことになったのですね!!だいじょうぶかな>_<?
http://ameblo.jp/miyabi27xmas
4. Re:うう>_<
>miyabi27さん
プライバシーなしの上司との一週間、怖かったです。
http://ameblo.jp/anti-pawahara/