それはある日の朝だった。
出社して席に着くなり、後ろから隣のチームのリーダーが話しかけてきた。
「安達君、ちょっと話があるんだけど、会議室に来てくれない?」
「は、はい…」
私は奥にある狭い会議室に連れて行かれた。
彼はいきなりこう切り出した。
「あのね、昨日出したメールだけど、あれ、問題じゃない?」
「え、なんのことでしょうか…」
「あのさー、あのメーリングリストには、一般の現場のメンバーも入っているんだよ。分かってるの?」
彼が言うには、現在、社を上げて取り組んでいるプロジェクトのメーリングリストに、ネガティブな意見を書いたので、みんなに多大な迷惑をかけているというのである。
私は、決して否定的な発言をしたのではなく、プロジェクトを効果的に進めるためにはこれはこうすべきではないか、という代案の意見を述べたつもりであった。
しかし、彼はそれが現場のメンバーのやる気を削ぐ、とんでもない発言だと一方的に批判してきたのである。
もう、どんな反論にも耳を貸さないような高圧的な雰囲気であった。
そして、彼は私に、非常に大きなダメージを与えることになる、次の発言を行った。
「あのね、課長は今日休みだから仕方ないけど、現場関係者を回って、みんなに頭を下げて謝ってきたら?
多分ね、明日、課長から雷が落ちると思うから。」
あの課長の雷…
そう、それは「怒鳴り声」を意味していた。
そして、「公開叱責」を意味していた。
皆の前で、大声で怒鳴りつけられるのだ。
この2年間ひたすら耐えてきたが、もう私は上司の怒鳴り声に対して、限界に達しつつあった。
しかも、この3か月間のプロジェクトの追い込みで過労がたまり、深夜残業の疲れが毎日私を苦しめていた。
そこに、あの課長の怒鳴り声…、怖い…、どうしよう…
私の頭の中では、もうあの怒鳴り声の再生が始まり、そのリーダーの声は耳に入らなくなっていた。
そう、彼は、私の中に積もり積もっていた恐怖の最後の一つのスイッチを押してしまったのだ。
そのスイッチが押されることで、私はついに最後の「一線」を超えてしまった。
そう、私は、次の日から出社ができなくなってしまったのだ。
(続く)
コメント
1. 初訪問です!
こんにちは!初コメさせていただきます!空いた時間で色々見てまわっていたらたどり着きました!次の更新もがんばってください!楽しみにしています!
http://ameblo.jp/infopreneur0416/