(続き)
結局、パワハラ上司と会社に、退職届と内容証明郵便のダブルパンチを食らわせたその日は、呼び出しはなかった。
普通に定時より少し過ぎた位を見計らって、いつものように退社した。
だが、家に帰っても、不安な心は消えなかった。
内容証明郵便を叩き付けたことで、経営陣はどんな反応を示すだろうかと考えると、心配でいっぱいになった。
なんだかんだいって、私は給料という首根っこをつかまれている、弱い労働者の立場に代わりはないのである。
パワハラ上司との闘いは、決して楽ではない。
ひたすら耐えることも大変だし、正面切って戦うことも大変だし、守っても攻めても心身をすり減らす闘いである。
だから、パワハラを受けると、多くの人は、この会社は合わないと考えて、退職を考えるようになる。
それを、泣き寝入りと呼ぶか、新たな人生への勇気ある一歩と呼ぶかは自由であるが、結局のところ、パワハラ上司と毎日顔を突き合わせるのは、実につらいことだからである。
私も、結局は、この会社から早く逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。
転職先が見つかったのを機会に、退職と引き換えにようやく勇気を振り絞って、最後の復讐として内容証明郵便を送りつけることができたに過ぎない。
次の日、私はいつものように会社に向かった。
しかし、いつ、社長や人事部から呼び出しを受けるかと、内心びくびくしていた。
その一方で、内容証明郵便でも要求した通り、パワハラの認定と謝罪を行ってほしいという強い気持ちも捨てきれなかった。
やはり、あの憎むべき怒鳴り声上司は許すことができない、こういう思いも強かった。
それは、偶然であった。
いつもなら出会うはずがない社長と、たまたま社内の廊下ですれ違ったのである。
普段なら軽く礼をして通り過ぎるだけであるが、この時は、心臓がドキドキした。
社長は私の顔を見ると、少しびっくりしたようであったが、すぐに平静な顔になると、声を掛けてきた。
「安達君、あの、ちょっと、私の部屋に来てくれないかね?」
ついに、呼び出された。
そう思った。
きっと、内容証明郵便について、詰問されるに違いない。
そう覚悟を決めた。
そして、社長の後をついていきながら、最上階の社長室へ向かうエレベーターに一緒に乗り込んだ。
(続く)
コメント
1. 無題
私も復讐の文書を送った後、不思議なことに後悔のような感情がありました。
何故被害にあったのはこちらなのに私がこんな思いをするのかと思いすぐに後悔の念は無くなりました!
もし他にも上司の悪事ネタを仕入れたら2段階攻撃をするかもしれません。
http://ameblo.jp/orangeorange-orange/
2. Re:無題
>オレンジさん
復讐は、したくてする訳じゃなくて、せざるを得ないからするものですからね。本当は、結構、心の負担になる行為だと思います。
でも、上司から受けた莫大な苦しみを考えると、ただ泣き寝入りするだけだと、自分だけ心の傷が拡大して、自分の尊厳を失ってしまうことになりかねないですから、防御本能として正当な復讐をすることは、大切なことではないかなと思います。
いろいろ大変かもしれませんが、頑張ってくださいね。応援しています。
http://ameblo.jp/anti-pawahara/