ロックアウト解雇からの立ち直り

前回の記事では、人事部長から呼び出された面談の場で、自主退職をしつこく迫られ、拒否して団体交渉要求書を渡すと、激昂した部長から激しく罵倒され続け、最後は社員証を取り上げられて、廊下に社外に強制退去させられたことを記させて頂いた。

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秘密録音は違法ではない

その時は、秘密録音をしていたのだが、

「お前みたいなクズ人間は、この会社にいる価値もない!」

のような罵倒を、その後、47分間、数十回に渡って聞き続けるのは、本当に辛いことであった。

普段は温厚で優しい人事部長が、鬼のような表情でお前呼ばわりで、従業員の人生、性格、才能のすべてを否定してくるのだから、一生忘れることのできない心の傷を負ってしまう可能性もゼロではないほど、恐ろしい場であった。

これは、体験した人にしか分からない恐怖であろう。

でも、パワハラの立証のためには、秘密録音以外に方法がないのが現状なのである。

公開叱責型のパワハラを除き、その大部分は密室で口頭で行われることが多く、文章に記録が残ったりことは殆どないので、後での立証が極めて困難なのだ。

また、秘密録音と言っても、上司の部屋に録音器を仕掛けてその会話を盗み聞きするという「盗聴」とは違って、自分に向けられた会話を録音するに過ぎないのであるから、無断で録音しているのは事実かもしれないが、「秘密」とまでは言えないのである。

むしろ録音だけが唯一の客観的証拠

実際、多くのパワハラ裁判では、会社側の弁護士は「原告は秘密録音を行ったものであり、それを証拠として採用はできない」などと必ず主張するが、裁判官はそのような主張を採用することはない。

むしろ、その録音だけが唯一の客観的証拠として、パワハラ裁判の勝訴に決定的な役割を果たす事例がほとんどなのである。

だから、もしパワハラを受けている人がいれば、ぜひ会社にいる間は、いつでもiPhoneのボイスメモで録音しておくか、あるいはICレコーダーを動かしておくことを推奨する。

ユニオンの相談員の励まし

私は、ロックアウト解雇された足で、いつも相談をしていたインターネットユニオンの事務所へと向かった。

いつも親切に話を聞いてくれる相談員に経緯を事細かく話すと、

「とうとう彼らは本性を剥き出しにして、実力行使に出てきたね」

と言った。

PIPで、半年はかかるような作業を、わずか1ヶ月でやれと命じられても、ひたすら従順に、全力で課題に取り組んできたのは、そうやって頑張れば、会社は解雇を撤回してくれるかもしれないという、一抹の希望があったからである。

だが、結果はPIP不合格で、罵倒に次ぐ罵倒によるロックアウト解雇であった。

私の最後の希望の可能性は、木っ端みじんに粉砕されたのであった。

だが、会社はついに、遠回しな婉曲な表現ではなく、閻魔大王のような表情ではっきりと直接的に解雇を通知してきたので、白黒がはっきりとしたいう意味では良かったのかもしれない。

実は、それがインターネットユニオンの相談員が狙っていたことでもあった。

「これから、一緒になって会社と闘って行こう。

本当に安達さんは良く頑張っているよ!」

相談員はそのように言って、最大限の表現で私を慰め、励ましてくれた。

自宅待機 – 束の間の静寂と休養

社員証を取り上げられた私は、会社にも行けず、ひたすら自宅で待機する日々が続いた。

この記事を読んでくれている人は、「いいな〜、仕事もしないで家にいられるなんて」と思うかもしれないが、心の中は全然休まらなかった。

なぜなら、自分は会社に戻れるのか、次の給料は振り込まれるのか、生活や将来はどうなるのか、全くと言っていいほどはっきりしたものが一つもなかったからである。

でも、PIPでひたすら1ヶ月、後ろから「解雇」という銃を突きつけられながら、土日も休まずに無謀な業務に全力で取り組んだ疲れは相当なもので、そこから解放され、自宅でゆっくりと過ごせるのは、非常にありがたかった。

まさにそれは、荒れ狂う海に放り出された船が、台風の目に入り込んで、一瞬の晴天と平穏を享受するのに似た瞬間だったかもしれない。

数日と経たないうちに、私は次の戦いの場に向けて、心を集中させていかなければいけなくなったのである。

会社が団体交渉への参加を回答

それは、ユニオンからの一本の電話連絡で幕を開けた。

「安達さん、会社から団体交渉に参加すると、連絡がありましたよ。

日時は、3日後の午後2時ですが、よろしいですか?」

会社は団体交渉要求を無視してくる可能性も半分以上想定していたので、参加回答はある意味、驚きであった。

そのような思考をしながらも、私は即答した。

「はい、分かりました。必ず伺います。」

そう、団体交渉の場には、本人は必ずいないといけない。

いくらユニオンの人が親切だからと言って、私は参加しません、代わりにお願いします、などという態度は絶対にNGである。

「私」の一大事であるし、ユニオンの人の心からの協力を得るためには、本人が過酷な現場に直接出て、敵と向き合う姿を見せることが、絶対に必要だと私は今でも思っている。

それは、たとえ弁護士にすべてを頼んだ裁判ですら、そうであると、私は信じている。

そして、その3日後の団体交渉の時間は、あっという間に迫ってきた。

(続く)

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