前回の記事では、PIP (Performance Improvement Plan) で社員証を取り上げられた後、2度に渡る団体交渉を経て職場復帰を果たしたところ、社内の私のアカウントはすべて削除され、周りの社員にも退職扱いされていたことが分かったという話をさせて頂いた。
復帰した日に、周りの同僚から「幽霊が返ってきた」ような驚きの視線で迎えられた私は、チームリーダーとの面談を通して、さらに驚きの事実を発見することとなった。
ワン・オー・ワンでの驚きの発言
チームリーダーとは週に1回しかワン・オー・ワンはしないのが普通だったが、復帰した日はすぐにチームリーダー室に呼ばれた。
リーダーは言った。
「安達さんは、体調が悪くて休んでいたと聞いていたけど、治って出社できるようになったの?」
なんと、私が社員証がなくて出勤ができない状況であったことは全く伝えられておらず、単に病欠程度の認識でしかなかったのである。
要する、PIPでのロックアウト解雇措置は、マネージャーレベル以上(部長職以上)でしか共有されていない極秘事項であったのだ。
私は、なんと答えたか覚えていないが、多分、適当にその場を繕って
「ええ、まあ、今は体調が良くなりました」
くらいに答えたと思う。
PIPの課題がその後の業務となった
そして、自席に戻った私に与えられた仕事は、PIPで与えられた課題の続きの作業であった。
会社としては、あくまでもPIPの課題は、私を退職に追い込むための過大な課題ではなく、通常の業務だったのだという「嘘の」前提を、正当化するためだったのだろう。
PIPでは、この課題は「4週間で十分できる」と言っていたが、PIPの期間でできたのは、わずか25%程度であった。
その機能は非常に膨大な量で、調査・設計だけでPIPの半分の時間を使い、残りの期間では実装(プログラミング)すべき作業の一部しかできなかった。
そして、この作業を進めていくことになったのだが、やはり、一生懸命やっても1ヶ月で進められるのは、全体量の25%がやっとだった。
つまり、この作業を完全に終えるのは、4ヶ月かかるという計算になる。
PIPの課題は、結局4ヶ月分の作業を4週間でやらせ、できなければ「能力不足」という理由を付けて解雇に追い込むための、「できなくて当たり前」の作業でしかなかったのだ。
私は、削除されたアカウントを一つ一つ、IT部門とやり取りしながら復帰させていった。
まるで、新入社員が最初に行うセットアップ作業のような毎日だった。
PIPという言葉は社内文書に存在した
そして、社内でしか見れないWiki(イントラネット上の情報ページ)のアカウントが復活された時、私は「PIP」という単語を入れて検索をしてみた。
すると、驚くことにアメリカ本社のエンジニアが英語で書いた業務日誌の中に
「私は、今日、PIPを課された。課題の内容はこれこれだ。」
という記述を見つけることができた。
そして、そのエンジニアの日誌は毎週更新されていたが、4週間後の日誌を最後に途絶えていた。
それは、私がPIPを受ける3年前の日誌だった。
私はそれを見て、確信した。
「やはり、PIPという制度は存在したんだ。そして、それを生き延びるのは至難の技なのだ…」
と。
そのアメリカのエンジニア以外にもPIPという単語が載った業務日誌は2-3件あったが、いずれのアカウントも既に退職者のアカウントとなっていた。
おそらく、私のようにPIPを生き残って、会社に復帰された事例はなかったに違いない…
私は、そう確信した。
(続く)
コメント
今日、当社で、正式にPIPを導入すると通知があり、のけぞったのですが、周りはぽかーんでした。
人事になぜ導入するのかと質問すると、凄いイヤな感じで、怒られました。
このコラムを読んできたので、本当に今後が怖いです。
PIPは限りなくグレーゾーンの制度で、今どき、導入することは信じられません。
ぜひ、自分の身を守れるように、いろいろ証拠保全をしたり、気をつけてください。