上司との悪夢の相部屋生活

上司との相部屋出張時に一番怖かったのは、週末だった。
想像はしていたが、案の定、仕事をするはめになった。

さすがに土曜日の午前中は何も言われなかったので、恐る恐る、一人でホテルの周囲を散歩してきた。
結果的に見れば、その時が、出張中、唯一の自由時間となった。

昼間、部屋に戻った際に、上司が声を掛けてきた。

「安達君、お客様から来たメール見た?」

私は心の中で、「見る訳ないじゃないか」と口答えしたが、実際にはこう口にした。

「いいえ、まだです。」

「さっきメールが来たんだけど、昨日送ったレポートで分かりにくい所があるから、至急直してほしいって。」

まさしく、ブラック企業の背後には、ブラック顧客がいると言われるが、その通りの状況だった。
お客様企業は、プロジェクトの締め日が近いので、こちらにも平気で土日勤務を要求してくるのだった。

私はたまったものではなかったが、上司に言われれば、仕方がなかった。
その土曜日の午後は、結局6時間も上司の隣で、パソコンとにらめっこしながら、資料の作成を行った。

終わった時には、もうすっかり日も暮れていた。
結局、日曜日も半日以上仕事をした。

実は、出張から帰ってから、会社には休日勤務欄に丸をつけて出勤簿を提出したが、その際、人事部長はこう言った。

「出張手当にすべて含まれているので、出張先ではどんなに残業しても、休日勤務しても、一切、手当は出ません。」

こんな感じで、冷たくあしらわれた。
この海外出張中は、パワハラ上司と相部屋だったおかげで、全く気が休まることがなく、土日も含め、毎日が勤務日だった。

しかも、日本にいるお客様は、毎日、Skypeでの電話会議も要求して来ていたのだが、それも夜の9時とか、10時とか、平気で定時外の時間を指定してきた。
さらに大変だったのは、その2つ星ホテルは無線LANの電波がまともに部屋の中で入らなかったので、Skypeの音声品質は最悪だった。

だから、会議の度に、強い電波が入るホテルのフロントまで降りて行って、そこにある席に座りながら、寒さに震えながらノートパソコンを膝の上においてSkype会議をした。
フロントとは言っても、10人も入ればいっぱいになるような狭いスペースで、椅子も3つしか置かれていない、安い作りの場所だった。

椅子が占有されているときは、私がノートパソコンをずっと手でもって、上司がそれを操作しながら会議するなんてこともあった。

寒さと手のしびれを30分以上我慢しなければならなかったし、そのSkype会議のための事前打ち合わせも念入りにしたりしなければいけなかったので、本当に苦痛であった。
上司にとっては元々定時なんて概念はないし、相部屋であることもあって、常に監視され、仕事に追われているような感覚があった。

結局、この台湾への4泊5日の出張では、毎日、すごいストレスとがたまり、疲労が蓄積していった。
外国に来た喜びを感じたのは、結局、土曜日の午前中に散歩したときの数時間だけであった。

この苦痛の5日間をようやくまっとうして、ついに帰国する日になった。
成田空港についたのは夜8時であったが、別れる直前に上司からこう言われた。

「明日は、朝9時からお客様の会社で会議があるから、遅刻しないでくるように。」

私は、疲労で頭が回らなくなっていたが、「はい」と答えると、上司とようやく別れた。

だが私は、もう、自分の心が限界線に達している感覚を覚えていた。
もう、耐えられないと思った。

成田空港から乗ったリムジンバスの中で、私は過ぎ去っていく東京の夜景を眺めながら、一人、涙を流していた。

「もう、だめだ。
明日の会議なんか、行きたくない…」

その時はまだ、明日の会議が、この会社にいられなくなるきっかけとなる最大最悪のパワハラの場になるとは、まったく想像もしていなかった。

(続く)

コメント

  1. オレンジ~パワハラ鬱と闘い中 より:

    1. 無題
    読んでいて恐ろしくなりました…
    日本のほうが2時間進んでるのに時間指定が相当遅いですよね。
    PCを持ちっぱなしの会議って驚きます、手が辛過ぎですよね。
    明日の会議がどんな恐ろしいパワハラになるか震えあがりました…
    http://ameblo.jp/orangeorange-orange/

  2. RyuMorimitsu より:

    2. お疲れ様です
    記事の更新必ず拝読させていただいております。

    辛い過去を記すのはお辛いと存じますが

    記事の先が気になって仕方ありません…
    http://ameblo.jp/haguruma-77/

  3. パワハラに負けない より:

    3. Re:無題
    >オレンジ~パワハラ鬱と闘い中さん
    お客様は、いざ会議が始まると、今日は忙しいから5分にしてとか、明日は私は不在だから会議いらないけどメールの報告はお願いとか、結構好き勝手言ってました。
    会社がホテル代ケチっても、相部屋とか、ロビーでSkype会議とか、結局、現場にしわ寄せが来るだけですね。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  4. パワハラに負けない より:

    4. Re:お疲れ様です
    >RyuMorimitsuさん
    いつも読んでくださっているとのこと、ありがとうございます。
    パワハラって受けてみないとその辛さが分からないものですが、私の体験を読んで少しでもパワハラ被害者が勇気を持って戦ってくれるように、更新頑張ろうと思います。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  5. きっと明日は晴れ より:

    5. 無題
    ゾッとするような状況ですね。
    悪い条件が重なってしまうと
    本当に疲れますよね。
    http://ameblo.jp/sasaeaitai365/

  6. パワハラに負けない より:

    6. Re:無題
    >きっと明日は晴れさん
    精神的な疲れで肉体の方もボロボロになりました。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  7. まゆぴょん より:

    7. 無題
    休む暇もなく、常に監視されているそんな状況で
    本当にツラかったでしょうね。
    お疲れ様でした。

    ひどい会社!ムカムカしてきます!
    http://ameblo.jp/tamayup/

  8. パワハラに負けない より:

    8. Re:無題
    >まゆぴょんさん
    会社を辞めろと後で言われた時は、出張の時、すごく配慮してやっただろうとか社長に言われましたが、パワハラ上司と相部屋で配慮も何もないです。常にひどく緊張して過ごしました。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  9. オレンジ~パワハラ鬱と闘い中 より:

    9. 無題
    すごいケチり方でビックリしますね。

    >出張の時、すごく配慮してやっただろうとか社長に言われましたが、

    これも私の現在悩まされてる会社で同じようなセリフ言われました。デジャビュかと思った。似た性質の会社のようです。
    http://ameblo.jp/orangeorange-orange/

  10. パワハラに負けない より:

    10. Re:無題
    >オレンジ~パワハラ鬱と闘い中さん
    パワハラ企業って、話す言葉まで似てしまうものなのかもしれませんね。怖いです。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  11. まこと より:

    11. 無題
    このコメントが気に入らなければ削除されてもいいです。
    記事最初から全部読みました。
    自分自身も嫌がらせとか怒鳴られるとかありましたが怒鳴り返してやったらどいつもこいつも自分の殺気でおとなしくなりましたよ。

    あと奥さんは働いてますか?
    旦那さんが苦しんでたら働いて家計を助け旦那さんの負担を減らすのが真のパートナーだと思います。ATMにしてる女は最悪です。

    それと全てを飛び越えいきなり社長に電話したりするのは嫌われて当然だと思うのですが。

    自分の場合は組合に入って徹底的に締め上げてやりましたが。

  12. 雷電 より:

    12. 読み返してみると
    こんばんは!

    記事を読み返してみると、自分の働いていた所に、やはり似ているような気がするんです。

    なんて言うのか・・・ブラック企業って独特の空気がありますよね?

    自分が辞めた時は
    「辞めれて良かった~!」
    と思いましたからね・・・
    http://ameblo.jp/aaa-7waz/

  13. パワハラに負けない より:

    13. Re:無題
    >まことさん
    コメントをどうもありがとうございます。
    最初から読んでくださったとのこと、ありがとうございます。

    怒鳴り返してやったとのこと、それは素晴らしい自己防衛努力だと思います。
    私はそこまでする勇気がありませんでした。
    ただ退職が決まってからの嫌がらせなどに対しては、一度キレそうになり、抗議をしました。
    まだ記事には書いていませんが、その結果、自宅謹慎を命じられました。
    社長はやりたい放題でした。

    妻は働いてはおりません。
    こういう危機の時こそ、家族の結束で乗り越えるべきですよね。
    うちは住宅ローンも抱え、子供もおり、家計にも余裕がないため、このようなパワハラで会社生活に不安が生じると、不安を通り越して恐怖にすらなります。

    ここの会社は正社員が10人もおらず、上司のすぐ上は社長でした。
    ここでは詳細は省略していますが、人事部長に事前に相談していました。
    でも、特に出張トラブルが発生してからは、社長も介入してきて、私への強いパワハラというか、執拗な退職勧告が始まりました。

    労働組合に入られて戦ったのですね。
    それはとても有効な手段だと思います。
    私は退職しろと強く言われ、退職届を出して冷たい嫌がらせが始まってから労働組合に電話相談したのですが、もう、事は遅いという感じでした。
    退職するまでの1ヶ月は地獄のような苦しみを味わいました。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  14. パワハラに負けない より:

    14. Re:読み返してみると
    >雷電さん
    コメントありがとうございます。
    ブラック企業って、入ってみないと分からなかったりするから、怖いですよね。
    怒鳴り声が飛び交う職場なのかとか、面接などでは分からないし、小さい会社だと、ネットの情報も少なかったりしますよね。
    結局、社長とか上の人の考え次第で、かなり空気って変わってくるような気がします。

    ブラック企業を辞めたとのこと、とても苦労をされたことと思います。
    新しい会社で、いい生活ができていることをお祈りしています!
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  15. あなたのブログの反応率を上げるコピーライター@鈴木ゆうたろう より:

    15. 初めて来ました!
    いきなりすみません!初めてコメントします!いろいろなブログを見てまわるのが趣味で、最後にたどり着きました!次の更新も楽しみにしています!また来させていただきますね!
    http://ameblo.jp/copywrite-suzuki/

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