謝罪するか辞めるかどちらかにしろ!

人事部長はこう言った。

「昨日のメールは読ませてもらいました。
今日の午後、会議をしたいんだけど、予定は大丈夫ですか?」

私は、何の話だろうかと思った。
今から考えると馬鹿であるが、パワハラの改善について、会社側が検討してくれて、その内容を説明してくれるものだと少し期待してしまっていた。

「あ、はい。
大丈夫です。」

私はそう即答すると、午前の仕事に取りかかった。
そして午後1時、ランチから帰ると早速、社長と人事部長が私を会議室に呼び出した。

ドアを閉めて3人だけになると、社長はおもむろに切り出した。

「あのね、昨日もらったメールの件だけど、いったいどういう考えであれを出したのか、説明してくれるかな?」

私は、社長や人事部長の表情が険しいのを見て、少し警戒心を抱き始めていた。

「あ、はい。
部長の怒鳴り声は、ちょっときつかったです。

ああいうやり方だと、私は…」

そう言いかけた時だった。
社長は声のトーンを上げるとこう言った。

「あんたは、要するに、部長とはもうできない?と言うんだな?
そうだな?」

それは、私の意見を聞こうとするような調子ではなく、あきらかに私を責めるような口調であった。
そしてそれは、もはや社長の考えを私に押し付け、反論を許さないような雰囲気の断定口調でもあった。

私はその社長のあまりに一方的な言い方に、返す言葉もなく数秒間黙っていた。
社長は、怒りを込めてこう言った。

「おい、安達!
俺は聞いているんだよ。

お前は、もう部長とは一緒に仕事がやれないという意味かって、聞いているんだよ!」

私は思わずこう言った。

「い、いえ、そんな意味じゃあり…」

だが、社長は私の言葉を遮るようにして、次々と私へ攻撃の言葉をぶつけてきた。

「お前な、いい加減にしろよ!
こら、ちゃんと俺の目を見ろ!

おい、お前な、部長とちゃんと仕事ができるのか、って聞いたいるんだよ!
お前、真剣に答えろよ!」

私は心拍数が急激に上がり、胸いっぱいにどす黒い不安が際限なく広がっていくのを感じていた。
社長と人事部長は恐ろしい形相で、私を睨みつけていた。

私は怖くなって、机に視線を落として、必死にその二人の詰問に耐えていた。
しかし、その度に、私に対して「目をそらすな、お前!」と言って、強力に圧力を加えて来た。

彼らの鬼のような目を、睨みつけないように凝視するのは、私には強烈な拷問のようなつらさであった。

私は、その部屋を飛び出したいほどの、威圧感に苦しめられた。
この会議の時の雰囲気は、今でも思い出したくないほどの、強力な圧迫面談であった。

今思い出しても、涙がにじみ出てくるほどの、苦しみと恐怖の会議であった。
この会議は、実に午後1時からなんと4時間半連続で行われた。

その間、この2人から全く休憩の時間を挟むことなく、私は詰問と批判を受け続けた。

「おい、安達、お前立て!
そこのホワイトボードに自分の性格の点数を付けてみろ。

まず、協調性、って書け。
その右に、5段階評価で何点になるか、点数を付けろ!」

私は、どう書けばいいのか、かなり迷った。
低く付けすぎれば自分の欠点を肯定することになるし、高く付けすぎれば批判を受ける。

だから、5点中3点と自己評価を付けた。
社長はこう言った。

「お前な、本気でそう思っているのか?
はっきり言うがな、お前は協調性ゼロだ。

いや、違うな。
マイナスだな。

お前がいると、他の社員の協調を乱してしまうからな。
お前なんか、部長とうまくできなければ、他に与える仕事なんてないんだよ。」

こういう感じで間断なく責め続けられた。
さらに社長はこうも言った。

「お前な、性格、異常に歪んでいるな。
俺は長い間社長をやってきたが、お前みたいな奴は今まで見たことがない。

俺は本気でお前のために言うが、病院に行って診てもらったほうがいいぞ。」

私は、このような屈辱的で高圧的、一方的な断定口調で語られる批判をひたすら、耐え続けた。
それは、一生忘れられないほどの、地獄の責め苦であった。

私が、少しでも自己の弁解をしようものなら、それに対して激しい否定が加えられた。
さらに、次のような言葉を何回も言われたことが、今でもはっきりと記憶に残っている。

「俺は社長だぞ!
なんだ、その言い草は!

俺はお前よりもずっとずっと苦労して来て、死ぬような思いに何度も合って来ているんだ。

俺の言うことは絶対的に正しい。
お前は、絶対的に間違っている!」

このような説教がほぼ3時間以上続けられた。
それは、次のような殺し文句を言うためであることが、最後に明らかになった。

「おい、お前。
最後に言うがな、部長に平謝りに謝ってすべてを一からやり直すか、辞めるかのどちらかを選べ!」

私は、もう完全にショックで頭の中が真っ白になった。
激しい人格否定が3時間も続いた後で、パワハラ上司に謝るか、辞めるかの二者択一を迫られたのである。

社長は、私への攻撃の手綱を決して緩めなかった。

「お前はな、ここを辞めたら、後は転落人生が待っているだけだろうな。
お前、家族もいるんだろう?

家族を路頭に迷わすつもりか?
お前みたいな奴は、どこの会社も必要としないだろうな。

はっきり言うが、これがお前の人生最後のチャンスだ。
部長に土下座してでも、ここで頑張らせてください、ってそう言えるかどうかにお前の人生のすべてがかかっているんだ。

おい、こら、分かるか、安達?」

社長の口調は、完全に脅迫であった。
私を恐怖のどん底に陥れて、自分の権力の前に完全にひざまずかせようという意図が、混乱する私の頭の中でもはっきりと感じられた。

私は、とうとう社長と人事部長の前で、すすり泣きを始めてしまった。

人生最大の屈辱の瞬間であった。
人生最大の苦痛の瞬間であった。


続く)

コメント

  1. akatuki2730 より:

    1. 辛かったね…(ρ_;)
    ヨシヨシ( ~っ~)/(=。_。)
    もう、その朝鮮労働党や、中国共産党からは解放されています!
    自分が基準とか、正しいとか思ってる人は、考えるチカラに乏しいので、相手を支配して安心するのでしょうね。小山の大将です。
    常に正しい人も基準も世の中にはありません。
    時と場合に因って、善悪は反転してしまうものです。
    そんなバカな社長の元を、早い段階で離れられた事は、善い事だと思います。
    モジモジしてしまう人は、圧力に弱いので、損をしてしまいがちですよね…。
    僕は普段は耐えますが、たまに破裂し、噛み付きます(笑)
    憎い相手へは睨んでいる事でしょう…

    労働者は、魂を売っている訳では有りません。
    技術や労力を売っているのです。
    その上で、我慢して上役の機嫌を気苦労し、そういった事が理解できないバカは、経営者たる資格も資質もない…ただの支配者なのです。
    本当に大変だったね…
    もう大丈夫だからねヨシヨシ( ~っ~)/(=。_。)
    http://ameblo.jp/akatuki2730/

  2. がんうつライダー より:

    2. 無題
    拷問3時30分よく耐え抜きましたね(T-T)
    忍耐力100%以上!!

    社長の方が協調性マイナスだと思います。そのような会社に勤めてたら貴方の価値が評価されずにもったいないです。
    聞く耳もたない社長は最低であり、社長の座にふさわしくない。
    こんな社長では会社の実績も上がらない。
    と思います。
    職安などに相談してみては?
    でも逆効果?告げ口したとか言ってきそう。
    辞めた方がいいのでは?
    土下座まで強要するなんてどうかしてると思います。

    つづく と なってるので、
    ここまでにしときますね!
    http://ameblo.jp/love-and-peace-rider/

  3. ポケポケ より:

    3. 無題
    ひどすぎる。

    ワンマン企業の現実がこれ。

    社員はおまえらのオモチャじゃねぇんだ。

    http://ameblo.jp/kisekihaokorukamo/

  4. 通りすがりの中年オヤジ より:

    4. 辞めてやれば良いではないですか
    辞めてやれば良いではないですか。
    ついでに、所轄官庁にチクッてやればどうですか。

    ブラック企業に入ってしまったと言えば立派な転職理由になります。
    53歳の当方でも転職先が見つかったくらいですから、大丈夫です。
    次、見つかりますよ。

    ただ、次からはエージェントさんや企業の採用担当者に転職理由を正直に言うのが吉かと思います。
    当方は、面接の時に正直に言いました。
    先方は同情していただけましたね。

  5. オレンジ@パワハラ鬱と闘い中 より:

    5. 無題
    酷過ぎますね…私の想像をはるかにこえてました。
    そんな長時間怒鳴り続けられらた誰でも涙を流してしまいますよ…
    お身体は大丈夫でしたか?
    パワハラに負けないさんは信頼できるのでいつも相談にのって頂いて有難うございます。
    http://ameblo.jp/orangeorange-orange/

  6. きっと明日は晴れ より:

    6. 無題
    無茶苦茶です。
    読ませていただきながら非常に強い恐怖を感じました。それ以上言葉が出てきません。
    http://ameblo.jp/sasaeaitai365/

  7. オレンジ より:

    7. 無題
    怖いです、本当に。
    そんな社長がよく企業のトップに立っていられるな、って思いました。

    謝罪って・・・
    パワハラ上司が行うべきじゃないですか?
    役職が上だとそんなに偉いんでしょうか?
    絶対に間違えないとでも思っているのでしょうか?
    世の中、不思議なことだらけですよね。
    http://ameblo.jp/fightworks2013/

  8. パワハラに負けない より:

    8. Re:辛かったね…(ρ_;)
    >akatuki2730さん
    暖かい応援の言葉、どうもありがとうございます。
    労働者は魂を売っている訳ではない、まさしくその通りですね。
    このパワハラ社長は、私にひざまずけと要求してきましたが、いくら生活のためとはいえ、怒鳴りつけ上司に頭を下げてお願いします、などとはとても言えない状況でした。
    そういうパワハラ上司を生み出す根源は、社長自身にあったということを感じた会議でした。
    こういう会社は、人を雇ってもすぐに辞めさせてしまい、人を大切にするということがないものと思います。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  9. パワハラに負けない より:

    9. Re:無題
    >がんうつライダーさん
    ここは一年間に社員の3割が辞めていくという職場でしたが、その諸悪の根源は社長にあったことを、この会議では思い知りました。
    こうやって多くの人を退職に追い込んでいったことを考えると、本当に許せない行為だなと思います。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  10. パワハラに負けない より:

    10. Re:無題
    >ポケポケさん
    社長が傲慢になると、社員は道具扱いになってしまいます。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  11. パワハラに負けない より:

    11. Re:辞めてやれば良いではないですか
    >通りすがりの中年オヤジさん
    応援ありがとうございます。
    こういうパワハラに負けずに、自分に自身をなくしたりせずに、次の職場を見つけることも大切ですね。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  12. パワハラに負けない より:

    12. Re:無題
    >オレンジ@パワハラ鬱と闘い中さん
    実のところ、この会議は、その後、1年半に渡って深刻なトラウマになりました。
    こういう行為は、もはや業務指導でもなんでもなくて、深刻な人権侵害行為だと思います。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  13. パワハラに負けない より:

    13. Re:無題
    >きっと明日は晴れさん
    恐怖の4時間半の会議でした。
    この恨み、苦痛は、1年半引きずりました。
    こういう苦しみを他の人には味わってほしくないです。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  14. パワハラに負けない より:

    14. Re:無題
    >オレンジさん
    社長は自分が経験も上だから自分は絶対正しい、だから謝れと何度も言ってきました。
    でも、そのやり方は、完全に間違っていますね。
    雇用しているから、上の人間だからといって、労働者を馬鹿にして言い訳じゃないですよね。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

  15. moneria* より:

    15. 無題
    私の上司にもそっくりです。
    公開叱咤、というより公開処刑ですよね。
    お気持ちお察しします。
    パワハラは何も生まないし、誰も得しませんよね。
    なんでそれを自分で理解できないんだろうって思います。
    どうか身体だけは大事にしてください。
    http://ameblo.jp/amusemoi/

  16. パワハラに負けない より:

    16. Re:無題
    >moneria*さん
    そうです、密室の攻撃でしたが、まさしく独裁者による公開処刑そのものでした。
    あの恐ろしさは、おそらく一生忘れることはできないでしょう。
    http://ameblo.jp/anti-pawahara/

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